Dark of silence

沈黙 は オト

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2010.03.03 Wednesday

願いの末に

パッフェルベルの鐘のサブストーリーというかメインシナリオというか…
いつものあれなのですが、今回は大分毛色が違いまして今迄やってた事の総まとめとなります。
・イフォトゥのストーリー
・ディーヴァのストーリー
・フィーネのストーリー
の全てがここで一度完結します。

アンオフィシャルではございますが、
イフォトゥとディーヴァに関する扱いはこのシナリオ上で起こったままに行おうと考えております。

盛り込む内容が多過ぎて文字数が10000文字を超えておりますので、お時間のある時にお読み頂ければ幸いです。
また、後日これに関連して『キャラクターの設定』を新しい記事で書き直し
その傍らに特殊な用語や出てきたキャラクターについて書こうと思いますので、そちらが出来てから読んでもいいかもしれません。






 氷の城の王は既に予期していた。
一つの物語の終わりはもう1つの物語の始まりに当たり、その理屈は変革を望まない。
故に、撒いてしまった種は必ずそれなりの物語を以て終焉を望む。
彼は自ら撒いた種を人任せにする程の冷酷さは持ち合わせておらず、またその物語にも興味があった。
一冊の本にしておきたい程に。

 近い春の待ち遠しい寒さの中、パッフェルベルは相変わらず騒がしかった。
もっとも、一番騒々しかった頃に比べれば拠点を移した錬金術師もいる為落ち着きが出てきた。
今は大した祭りごともなく何ら変哲のない日常と言ったところだ。
もちろんそこには例外なくイフォトゥも含まれていた。
彼女は工房で一人、読書に勤しんでいる。
持っているのは絵本で、字の読めない彼女は眺めているだけだった。
最後のページを見終え裏表紙を閉じて本棚へしまう。
隣の絵本に指をかけたが何を思ったのかその指を離した。
そしてその本棚の隣の窓を開けた時にパッフェルベル学院の鐘が鳴りだした。
鐘の音がイフォトゥの耳に入るや否や彼女の体がぴくりと跳ねる。
拍子に見開いた瞳は普段以上に猫目になり体には不自然な力が入り続ける。
刹那のまばたきが喚んだが如く彼女の周囲を火の粉が舞い、そばから数を増やし続けたそれは炎となった。
彼女の身を隠すように炎は燃え盛り、再び彼女が姿を見せた時には『彼女』は『イフォトゥ』ではなかった。
姿無き筈の精霊『イフリーテ』が『器』に降臨したのである。
異形の足は地を要せず剣の翼を広げて宙に浮く。
好戦的に微笑んだ後、片手に火の短剣を浮かべて窓の向こうへ飛ばそうとした。
しかしあと少しの瞬間に彼女は煌めきの中へ消えた。
鐘の音は悠長に響き続けていた。
イフォトゥ、23歳の誕生日の事だ。

 イフリーテの打った短剣は硬い音を発てて落ちた。
白い空に黒い大地。そこから唐突に突き出した氷の壁が短剣を止めていた。
『何のつもりだ、少年』
イフリーテが睨み付けたのは氷の向こうで杖を構えているロゥアだ。
「自分で蒔いた種ですし、早いうちの方がいいので」
『足掻こうと、器は器だ。それ以上の価値など無い』
彼らの他に生物は居らず、ただ閑散とした静けさが辺りに広がる。
「…それでも、人は価値を見いだしてしまう。その思いは尊い」
ロゥアの言葉にイフリーテは不満の表情を顕にした。
『何故人の願いを精霊が叶えねばならないのか、理解出来ぬ』
「きっと貴方には分からない事でしょう。…人だけが本当の奇跡を起こせるんですよ」
ゆっくりまばたきをしたロゥァにイフリーテの剣の羽根が迫る。
彼の目前に再び氷の壁が現れ、剣を弾き飛ばす。
イフリーテは声を出して笑った。
『はははッ!少年、貴様は本当に面白い。もっと私を楽しませろ!』
彼女の猫目が鋭くなると同時に剣の翼が開かれ飛散する。
それぞれの羽根は異なる動きをしてロゥァに迫った。
しかしその全てが進路に出現する氷の壁によって阻まれる。
「手加減して下さってありがとうございます」
その声には感謝の感情は含まれない。
冷たい視線は不敵な笑みを浮かべるイフリーテに向う。
『しかし、このまま時が続けば貴様の方が不利になるな。独りで死ぬつもりか?』
「死ぬつもりは微塵もありません」
ロゥァは持っていた杖を地から離しもう片方の手を添える。
「そしてボクは独りでもない」
言い終わると背後に赤い衣に蒼い拘束具のついた少女が現れる。
召喚獣・ミレナリィドールだ。
「メモリーリード…」
彼の唇が聞こえない音をなぞると蒼い拘束具は外れ、少女は形のない虹色へと変化する。
そしてそこから全てが赤く染まり、その赤の中からまた違う形の少女が現れた。
瞳も髪も服もルージュも赤い、全てが赤い少女だった。
全ての赤が彼女へ収束すると浮遊する彼女はロゥァへ近付いた。
『…久しぶり…ね』
「ええ、お久し振りです」
彼女は鈍く微笑み、ロゥァは僅かに悲しげに微笑んだ。
『なるほど、それは良い助っ人だ。…されど、私を抑える事は不可能。無駄だ!』
イフリーテは笑う。
その声に向き直ったロゥァは口を開いた。
「確かに我々二人であってもあなたを抑える事は出来ない。でも可能な行動は増えました」
『そう、例えば……時間的猶予を作る…とか』
ロゥァは杖を構えその先をイフリーテに向ける。
その杖に少女は手を添えた。
『此の時空を 彼の精霊を 其の全てを持って引き止めよ』
少女の言葉と同時に剣の羽根が降るが、それは先程の攻撃と変わらず氷に阻まれる。
『ふ…ははッ!何をしようと無駄だ!私を抑える事は無理だ!器は器だけ遺す。それが器の定め!』
体の周りに無数の剣をイフリーテは喚び出して、その全てを彼に放った。
半数は大きな壁に当たり打ち返されるが、残りの半数は徐々に数を減らしながらもロゥァへと近付く。
しかしロゥァは慌てる様子もなく杖を構えたまま動かない。
動いたのは少女の方だった。
杖から手を離し剣の方へ向いて何かを呟く。
『…フレイム』
同時に剣は黒い炎に包まれ焼失していく。
『…貴女も…炎の眷属なのでしょう…けど、直接操れる訳では…ないから…』
彼女の炎によって放った剣は一つ残らず燃え尽きて、ロゥァへ届く事は無かった。
そしてイフリーテの体が足元から凍り付いていく。
『く…は…所詮っ、氷!私の熱でじきに溶ける!』
彼女は強い口調で言葉を発するものの、身動きも出来ずただの氷の塊となり果てた。
大きく息をしてロゥァは構えていた杖を下ろす。
そして隣で浮く赤い少女を見て僅かに微笑んだ。
「お帰りなさい、レイナさん」
『ありがとう』
彼女の手はロゥァの頬に触れられる。
『わたしもずっと…この物語に干渉してきたのよ…』
愛おしそうに微笑んだレイナの眼には沢山の物語が映っていた。

 ディーヴァは体の痛みで目を覚ました。
痛みの理由は特に思い当たらず、覚醒しきっていない体を起こした。
起こしてから冷静になってみればそれはただの幻覚で、体に痛い部分など微塵もない。
しかし目の前には見慣れない衣服の人物がいた。
見慣れない筈のそれが、されど誰なのかはよく分かっていた。
「…こんな所に何か用か?」
「ええ」
緑色のウェーブのかかった髪が近付く。
その人物は傷付いた左目を探ってキスをした。
「終わりと始まりを見つけに来たわ」
ディーヴァの養父、リリスだった。
意味が分からずにディーヴァは眉を顰める。
その様子にリリスは続けて語る。
「貴方にも選んで欲しいの。…いいえ、私は貴方が決めてくれるなら良い。他のどんな事にも興味はないわ」
「何を決めるんだ?」
リリスは愛しい息子を抱き締める。
「これから話す真実を、どう受け止めるかを」
預けられた体重に適わずディーヴァはそのまま後ろに崩れた。
胸の上に乗ったリリスの頭を撫でたのは、なんとなく彼が泣いている気がしたからだ。

 赤き少女、レイナは空に手を拡げていた。
蒼き少年、ロゥァは瞼を閉じていた。
世界には唯一ロゥァの呼吸と衣擦れの音だけが存在している。
その沈黙を破ったのはレイナの腕だった。
突然大きな炎を繰り出すとその中から水の塊が現れた。
水流が巡るその塊は暫く戸惑うように形を留めなかったが、少しずつ安定して形を成していく。
胸の大きな女性の形を作り出すと水流は一度止まった。
しかしそこから急激に周囲へと水が飛び出す。
繭のようにその姿を隠したと思えばそのすぐ後には切り裂かれたように崩れ、そして繭の様な水は消えた。
中から現れたのは白い肌で豊かな胸を持った女性だった。
少し離れて様子を見ていたレイナは彼女に向って語りかける。
『ようこそ…久々の戦いへ、リリス』
リリスと呼ばれた彼女は優しげに且つ妖艶に微笑むとレイナの手を取った。
『この力が必要ならば、例え滅してでも協力するわぁ』
間延びした語尾が少しだけ場違いだと、レイナはくすりと笑った。
「レイナさんは少し柔和になりましたね」
その様子を見ていたロゥァが声をかける。
『あら…もう頼み終わったのかしら…?』
「ええ、彼女とはよく連絡を取っているのですぐ話がつくんです。…そしてお帰りなさい、リリスさん」
向き直り、律儀に挨拶をするロゥァに向ってリリスは
『久しぶりねぇ〜。ちょっとは男っぽくなったみたい?かっこいいわぁ』
と、緊迫感のあった空気を壊す一言を放った。
少年は笑い、謝辞を述べた。
少女は困り、眉を顰めた。

 ベッドでディーヴァとリリスは隣り合って座り、仄暗い中リリスは語り始めた。
「…貴方を苦しめたのは私だったの」
「なんの」話だ。と聞こうとした。
しかしその言葉は遮られてリリスは真実を示す。
「貴方が幼少期に暗闇の中で暮らさなければならなかったのも、沢山辛い思いをしてしまったのも、全て私のせいだったの」
それは今にも泣きそうな声だった。
「私は実験体を『受け止める存在』だった。その時が来る迄『生きて』いる為に人格を作られたの」
「実験…?」
聞き覚えのない単語だ、とディーヴァは思った。
リリスは一息ついてから口を開く。
「彼…我が神は、この世界と対になり得る世界が有る事を知ってしまった。そしてその世界と繋がりを持とうとした。それが実験よ」
顔を伏せてあげる事はなく、表情も暗いままだった。
「…とても愚かな実験だったわ。遺志の強いものをこちらに引き込んで固定させ、そしてそこを接点として拠点にしようとしていたの」
「この世界は繋がりやすいと聞いたが…?」
嘗てロゥァが言っていた事だ。
「そう。けれど、対となる世界とは交わらないし交わる事も出来ないわ。言わば裏側にあるのよ。そしてそれを彼は知っていたのに…」
言葉尻はもごもごとした欠片になって消えていった。
ぎゅっと閉じていた瞼を開けてリリスは再び言葉を取り戻す。
「そう作られたから、私は何度も受け止めようとしたわ。でもやっぱり無理だったの。なんども、なんども、かかった指が離れ遺志が闇の中へ消えていくのを見て…私は疲れてしまった。消えてしまう悲しみを止めたいと願ってしまったの」
組んだだけのリリスの指がディーヴァには祈っているようにも見えた。
「だから確実に受け止められる術を作ったの。中間の記憶を造り上げて送り込み…『私ではないもの』に無理矢理押し込めた…」
彼は震えていた。
自らの罪が恐ろしくてしょうがなかった。
瞳から涙が溢れるのをとめる事は不可能だった。
細くて揺れるその体をディーヴァは支えるように肩を抱く。
「でもそうやって出来る迄にかなり時間を要してしまったの。…それが、貴方がずっと暗闇の牢獄に閉じ込められていた理由なの…よ。私がっ、私も怖かったの!自分を亡くすのも、折角遺志として存在する人々を亡くすのも、嫌だったのよ!怖かったの!…怖がったのが、いけなかったのよぉっ!」
涙は流れ続けているのにリリスは饒舌に喋った。
それはただ、悲しみと恐怖の余り狂気に犯されていたからだ。
今にも壊れてしまいそうなリリスを抱き締めてディーヴァは放さない。
「貴方の記憶は私が造ったもので、そして貴方の体も私が造ったもので、…私は貴方に愛を憶えたわ。だから…だから貴方に私を愛して欲しいと、愛してくれる道だけを与えたの。誰も許さないでいいから、貴方だけいてくれればいいと…本当に思ってしまったのよ」
少し落ち着きを取り戻してリリスはディーヴァの背中へ腕を回す。
「それは…神に反する行為だった。そして『存在しない筈の存在』を2つも作り出してしまった。…だから彼は天秤を作り出した。孰れ生まれる大きな『存在しない筈の存在』になり得る少女と貴方を計り、片方を捨てる為に…」
リリスは目尻に残った涙を拭いて続ける。
「彼女は私と近い『器』という存在で、そして彼女の母も同じく『器』だった。けれど彼女の母は器に入るべき精霊と共生する事が出来ていて、娘を孕む遥か以前に娘は天秤にかけられると言う事を理解した。そしてもう片方の天秤に加担している私とコンタクトをとって、この天秤を撃ち破る術を考えたのよ」
「天秤の片皿に乗っているのは…イフか」
ディーヴァはリリスを放し緩く首をかしげる。
「そうよ。…そして術とは、なるべく安全な場所で貴方達に接点を持たせて可能性を生み出す事だったの」
「そんな事で可能性とやらは生まれたのか?」
「それは分からないわ。…けれど、彼は『別の世界が関わる事』までは想定していなかった筈よ。だから『有るかもしれない』と思うの」
すっかりいつも通りの様子に戻ったリリスは指や爪を掴んだりして気を紛らわせた。
ディーヴァは大きく溜息をつくともう一度リリスを抱き締めて、声を上げて泣いた。
驚いたリリスが彼の背中を撫でる。
「…俺の本当の形が、亡いのは本当か?」
リリスは黙って首を縦に振る。
「俺はこの世界の生き物じゃ無いのは本当か?」
再び彼は頷く。
「いつまでも、貴方を苦しめてしまってごめんなさい。幸せにしてあげたかったのよ、私も」
泣きそうなリリスの微笑みに彼の胸を借りてディーヴァは泣いた。
信じていた自分の存在が大きく揺らぐのが不安で、悲しさと虚しさが入り交じった寂しさが涙を溢れさせている。
その涙を受け止めるように今度はリリスが彼を撫で続けていた。

 海辺に佇んでいたフィーネ・マーレフォンドは少しだけ眩い方へと振り返り、けれど何も無かったかのように向き直って海へと落下した。
そして深く深く潜水し、地を這うように泳いで故郷へと帰る。
途中で迎えの爺がやってきて急き立てる。
「もうすぐ始まってしまわれます」
「分かっているわ」
少しだけペースを上げて泳ぎ時には爺に引きずられながら辿り着くと、彼女の周囲には女達がやってきて装飾品を付けたり化粧を施したりする。
渡された服にさっさと着替えると比較的若い女がやってきてまた引っ張る。
フィーネは最早なされるままに引かれ、神殿迄辿り着いた。
神殿の前でフィーネは捨てられるように置き去りにされる。
内心悪態をつきながらフィーネは神殿へと足を踏み入れた。
「水の精霊よ、海の精霊よ、私を現と認め給え」
フィーネは本当に下らないと思った。
どうせこれでこの集落の成人の儀なんて最後なのに、と。

 凍り付いたイフリーテは未だ一向に動く様子はなく、時間的猶予はまだ残されている事をロゥァは確認した。
『随分と慎重なのねぇ?』
彼の前に回ってリリスが訊ねる。
組んでいた腕を下ろしてロゥァは回答する。
「ええ、これだけ何回も同じ事を繰り返していると現行の状態を見失うので」
ぽかーんとしているリリスを余所に背後からレイナが声をかける。
『何回目だったかしら…』
「50回近かった気がしますけど…その中でボクが死ぬ事が無かったのは幸いでしたね」
更にリリスは間抜けな顔をして、そして気がついた。
『死んじゃったら繰り返せな…っていうか何でそんなに繰り返してるのよぉ。そもそも繰り返しちゃって大丈夫なのぉ?』
質問攻めにロゥァは表情一つ変えない。
「ここはぼくの管下…というより、造った世界ですから物理的な死には至らずに再生出来ます。ただ、回復に時間はかかりますが」
リリスはへぇだとか見事に分かっていないような相槌を打つ。
くすくすとレイナが笑う。
『貴方は…重回の記憶がないのね?…この戦いで…果たすべき事を果たせる確率は…ゼロに近い。その為に…過不足のない作戦と……そして、その先の未来の為に…幾つもの手を打ってきた…』
その口調も相俟ってか、やはりリリスはさっぱり分からずあまり聞いていない。
ロゥァはそんな様子を気にも留めずに思った事を口に出す。
「重回の記憶は[純血]でないと保てないんじゃ無いでしょうか?」
『…あら?じゃあ、貴方は?』
レイナが首を傾げるとゆらりと長い髪が靡いた。
「そもそもは[純血]に適応していましたし、現在は相応程度ではあるんじゃないでしょうか?世界影響についての考慮が出来ませんが…」
話が複雑になってきたせいかリリスは投げ出して爪の長さを気にしだした。
思い出したようにロゥァがリリスに向き直る。
「…それで、何故我々が繰り返して問題ないかというとそれは[この問題の根源から時の乱れが存在しているから]です」
『ん…な、えぇー…そんなに大きな話なのぉ?』
リリスはその言葉が自分に向けられているのに反応が遅れ、わたわたと返答する。
そしてレイナは真剣な顔で答える。
『少なくとも…私達にとっては最大規模よ…。[罪の絆]のそれ以前…私達にとっては、古の事…』
『いにしえ?』
可愛げに首を傾げるリリスを無視してレイナは続ける。
『私達が生まれる前の事…原初の世界が滅びるより、もっと前の事よ』
一つ、大きな欠伸をしてリリスは目を擦った。
『なんかぁ、むずかしいわぁ。リリー、起きたばっかりだし眠くなっちゃったぁ〜』
『…そんな事だろうと…思った』
レイナはしらけた様子でリリスの側を離れた。
向いた方にいたロゥァは彼女に声をかける。
「あの時彼女が[時を止めて待ち続ける事]を願わなければ、[有り得ない筈の事]も起きなかったのでしょうかね?」
『それは私でも分からないわ…。一つだけ分かるのは…彼女はその力を持って…[必ず願いを叶えた]事よ…。それがどんな願いになるかは、分からないけれど…』
それを聴いて、ロゥァは腕を組んだ。
目を閉じると白い羽根が落下する映像が浮かんでくる。
彼はその羽根をぎゅっと掴む。
次に開いた時にはもうその羽根は映らず、そしてロゥァは瞼を開く。
「彼女にしては随分手荒ですが、まぁ悪い方法ではないでしょう。…リリスさん、ちょっとだけ手伝って下さい」
うとうとしていたリリスの腕を引っ張り、ロゥァは杖を構えた。

 夜明けの頃に、ルナは目を開いた。
未だ暗いがその部屋にはランプが灯っている。
「知らせは有りましたか?」
黒猫の尻尾を持つ少女が問う。
「ええ、受け取って下さったので了承されたと思いますわ」
そう答えながらルナはベッドから降りると白い羽毛が少し床に落ちる。
その手を男が取る。
「これは…僕とルナが出会うのも運命だったって事かな?」
「どうなのかしら?ただ、貴方がセイレーンで良かったと思ったのはこれが初めてね」
そしてルナは部屋の中程で座っていた少女に向い、微笑んだ。
「心の準備は出来ていて?」
「…はい」
長いブロンドの髪が揺れる。
そして少女は隣にいた黒猫の少女に手を引かれて立った。
強い意思が眼の中に映る灯りとなって、キラキラと揺れる。
「それでは、始めます。あなたは眼を瞑って…そしてイフさんも。メイキさんはこちら側から補佐をお願いします」
と言い終えるとルナは眼を閉じて男と金髪の少女の手を取った。

 常夜の草原は風が巡る。
ぽかりと空いた草のない場所に、水が注がれていく。
空になった瓢箪に栓をすると、錆びた手枷がちゃらりと鳴った。
金髪の青年が後ろからやってきて枷のついた女に声をかける。
「ツキヨサンー、もうデキタノー?」
「ふむ、もうすぐじゃの」
女は水たまりから顔を上げて振り返ると、青年が布で目隠しをされた少年を連れていた。
「…潮か」
にかっと笑って青年は少年を前に立たせる。
「ローァはコレが目的らしいカラねっ!シキに頼んで無理矢理連れてきタョ」
やれやれといった表情を浮かべた後、青年は少年の手をぎゅっと握った。
石像が如く彼は動かない。
「ほう、大路の神子は無意識を分離させられるのかや?」
「オージノミコ?」
質問に質問で応えられた女は首を捻る。
「ぬ…ああ、今は清宮だったかの?」
青年はぽんっと手を叩いて納得を表す。
「アー、本名の方ネー。そうそ、キヨミヤだよ。シキが無意識に近いカラそっちの方が得意だってコウジさん言ってター」
「さようか」
大きく頷いて女は水たまりを見遣る。
どこからかやってきた揚羽蝶がその水たまりに近付いて消えた。
「…そろそろじゃの」
水面には揺れる4つの月が映っていた。

 リリスを前に、ロゥァは杖を下ろす。
『…ねぇー、何がはじまるのぉ?』
踵を返して遠離ろうとしたロゥァに縋り付くようにリリスは甘い声をかける。
「召喚…と言えばいいんでしょうか。必要な欠片がここに集まるように手配しているところです。そろそろタイミングが合ってくれれば良いのですが…」
言葉尻で僅かに微笑んだロゥァの両頬にレイナの手が触れる。
『大丈夫…よ。その時は必ず…来るわ…』
上げかけた手を杖を握り直す事で下げて、ロゥァは虚空を見上げた。
どこまでも白いその世界の空に黒い亀裂が走る。
亀裂から宇宙を思わせる球体が現れた。
《ローァー、キコエルー?》
球体に金髪の青年の笑顔が映る。
ロゥァは球体に向いて軽く手を振った。
「はいはい、ちゃんと聞こえています」
《コレ、このまんま入れれバイイノ?溺れナイ?》
傍らに立つ少年を指して彼は百面相を繰り広げる。
そしてそれを横から眺めていたリリスが口を開いた。
『こっちのイケメンだぁれ〜?』
少しだけ面倒だという表情を浮かべながらロゥァはそれぞれに返答する。
「…彼はボクの末裔で、潮さんは幽体なので入れても溺れません。そもそもそれ、多分水に見えているだけですよ?」
《ソウナノ?ンー、ジャ、とりあえず入れるヨー》
青年は少年の腕を引いて面に向けて押す。
球面は波打つように揺らぎ、波の中心から少年の体を吐き出した。
ゆっくりと地に降りるその少年を眺めて一言リリスが呟く。
『こっちは可愛い系ねぇ…悪くないわぁ』
地に付かないように浮き続ける彼にレイナは近付いて額を撫でた。
そしてリリスを手招く。
『なぁに〜?』
『貴方の…仕事、よ?』
彼女の触れていた額には印が浮き出ている。
リリスはそれをじっくりと眺めた後空に紋章を描きその印の上に置いた。
溜息を吐きながら彼女は更に愚痴を呟く。
『そこまで主導権が必要なのぅ?アレって意識まで弄っちゃう系?』
『…彼女は、我々と同じよ。同じだからこそ…絶対的な優位が…必要』
答えながらレイナは球体に向けて別れを告げるロゥァを眺めた。
《ぬしらは、巻き込まれるよりも先に生まれたもの故…この罪を絶やす事も不可能では無かろう。…期待しておる》
「ありがとうございます。貴方の未来に、光あれ」
金色の錆びた枷が鈴の様な音を発して球体は瞬時に消えた。
ロゥァはゆっくりとまばたきをして、そしてレイナに見られていた事に気がつく。
「どうかしましたか?」
『いいえ…。それより、彼女の準備は出来たみたい…』
背後を見遣りレイナは体を退ける。
宙に浮いた少年の体の周辺から渦潮の様な水が巻いていた。
『潜在能力は結構なものね…』
『見た目のかわいさに反してぇ、このがっつり感は無いわぁん…』
顔を歪めるリリスを後目にロゥァは少年の手に触れる。
軽く握られていたその手が解けて、中から揚羽蝶が飛び出した。
「…辿り着くには、余りに遠い。ですか」
蝶は何かを探すように宙を舞い続けたが、結局見つからなかったのかふらふらとレイナの方へ向った。

 フィーネは深海の神殿の更に奥深くへと立ち入っていた。
それは一族の掟で足を踏み入れてはいけない場所だった。
けれど彼女は違う。
いつだって彼女は一族とは異なる道しか歩めない。
小さな部屋の突き当たりには一つだけ扉があった。
その扉に凭れて、フィーネは溜息を吐く。
「…できれば、こんな日は来て欲しくなかったの」
彼女は顔を上げて、その扉を引いた。
扉の先には[面]が存在していた。
「…ロゥァさんからの伝言です。もし、全てが崩壊してしまったら『エリザベス』を再生して下さい。管轄外である貴方だけに頼める事です。…どうか、この『世界』をよろしくお願いします」
[面]が彼女の言葉を通すように歪んでいく。
彼女は扉をゆっくりと閉じた。
そしてもう一度扉に凭れる。
『分かったわ。それがない事だけ、祈ってる』
扉の奥から微かに聞こえた女性の声に、フィーネは安堵した。
そして彼女はその場で眠りに落ちた。

 静寂を破壊音が引裂く。
氷が少しずつ砕け散っていく中、ロゥァはゆっくりと杖を構えた。
「リリスさん、後はお願いします」
『えぇー!リリーに全任せなのぅ?』
ぶーぶーと頬を膨らませながら彼女もまた腕を広げて構えをとる。
その腕には少年の体から出た水流を巻き付けて轟音を発てている。
『一応、補佐はするけれど…主戦力は貴方だから…』
レイナはロゥァの隣で彼の持つ杖に手を添えた。
そしてその瞬間、イフリーテが太刀を振り身の周りにあった氷を破壊して飛び出してくる。
『誰を!何人呼ぼうと!精霊には勝てぬ!』
彼女はロゥァに向って飛び込む。
ロゥァは氷の盾を精製してその動きを止めようとするが彼女は止まらない。
「…勝つつもりは有りませんよ」
ロゥァがぼそりと呟くとそれを合図にするかのようにリリスが水流を投げた。
纏まっていた水流が拡散し、精製された氷の盾すら押しながす。
水流の中から幾つかの剣が飛び出してロゥァへと向う。
片手で殺風景な世界とその中を飛ぶ剣を撫でるように動かしてレイナは何かを呟いた。
それと同時に剣が黒い炎に包まれる。
そしてロゥァが足元に氷の盾を作るとそこに同じ様な剣が当たって跳ね返された。
水流の中から濡れたイフリーテが急上昇する。
『何が、望みだ』
ロゥァを睨み付けてイフリーテは宙に佇む。
彼は無表情を崩さずに彼女を見上げた。
「我々の絆の終焉を心から望みます」
『…つまらぬ。憎悪を糧にせよ!』
彼女の周囲から幾千の剣が現れ、ロゥァへ目掛けて放たれる。
リリスはその剣の群れを下から押し上げるように水流を曲げた。
水の壁を切ってイフリーテがロゥァに迫り、切りかかる。
それを細い杖の柄で受け止めてロゥァは怪訝そうに口を開いた。
「貴方は、未だ若い精霊ですね。物質の精霊は総じて文明ありきで生まれている筈ですから。…その高慢な態度は、恐れを隠す為ですか?」
レイナが杖に触れて黒い炎を宿すと、イフリーテの持っていた太刀は焼け崩れながら再生を続けた。
じりじりとロゥァを押し続ける。
『何を、だ!』
一度太刀を振り上げてたたき落とすがロゥァは倒れない。
「貴方のお役が御免になる事を、です」
隣でレイナがイフリーテを睨む。
『破壊の為にしか使われない貴方が、彼女を破壊し尽くしたらお役御免になってもやむを得ない…。もしそうで無かったとしても、その器は没収されるわ…』
イフリーテは急上昇して、そこから後退した。
怒りに燃えるその瞳は細い細い猫目だった。
『そんな事を、精霊は恐れぬ!』
リリスは纏めた水流を彼女に投げ付けるが、切り刻まれて水となり雨となる。
イフリーテは炎に包まれた短剣を体の周囲に浮かせて笑った。
『下らぬ侮辱だ!後悔するが良いッ!』
おびただしい数の短剣が彼女の周りに集まり、そしてその全てを彼女の手の一振りでロゥァへと向わせた。
リリスが水流で押しながそうとするが、剣の速さが勝る方が多い。
氷の盾の精製はやや間に合わず、間に合ったとてそれを炎がくり抜いて通り過ぎてしまう。
レイナも追って炎を燃やすが同時に燃やせる数にはどうしても限界が生じ、無限とも言えるその剣の大軍には対応し切れなかった。
短剣がロゥァの体を貫こうと動きを速める。
しかし、ロゥァは微動だにしていなかった。
迫り繰る短剣の先をただ、見ていた。
そして彼の胸に切先が掠める。
しかしそのそれらの短剣は見えない壁に弾き返されてしまった。
そして未だ計りしれない程の数があった短剣も地面へとたたき落とされていた。
『な…なんだ、この力は…』
イフリーテが驚愕して蹌踉めく。
そして見たことのない少女がロゥァとリリスの間に立っている事に気がついた。
「はじめまして、イフさん。私も貴方と同じ『可能性の名前』を持つ者です」
翼を持つ小柄な少女が微笑む。
『ま…さか…!』
「そう、イフ・リトル。『原初の可能性』です」
彼女の長いブロンドの髪が揺れると、それはこの世界で唯一煌めいて見えた。

 泣き疲れて横になっているディーヴァの傍らで、リリスはふと顔を上げた。
その視線の先に夢幻が現れて少女を象る。
『…お邪魔します』
一つ礼をして彼女は長い髪を揺らし、目蓋を開ける。
それと同時にディーヴァが上半身を上げて彼女を見た。
「フィーネ、か」
『ディーヴァ、今迄ありがとう。貴方がいたから退屈せずにいられたの。だから最後に、プレゼント』
彼女がその双腕を広げると、夢幻の放つ僅かな光が拡散し新たな形を作り出す。
それは何かを映し出す楕円型の夢幻モニターだった。
「ロゥァ…?」
「これは…これが、彼女の天秤の糸を切る戦いね」
悲しげな表情になってリリスはディーヴァに寄り掛かった。
二人は寄り添って、そのモニターに映し出されるイフリーテとロゥァ達の戦いを眺める。
眺めるしか、もうできる事がなかった。

 二人のイフが対峙して、時が止まったようにイフリーテは原初のイフを睨みつけたままだった。
ロゥァはイフの頭上を見上げるとその瞬間、彼の視線の先にふわりと少女が現れる。
巫女装束を身に纏った狐の尻尾を持つ少女が、深い眠りから醒めるようにゆっくりと目蓋を開けた。
『お久しぶりだよっ♪』
「本当にお久し振りです、シヅクさん」
イフリーテは彼女を見て身じろぎした。
『な…な…なぜ、あ…貴方がっ……』
まともに喋れないイフリーテにシヅクが近付く。
そして彼女の額にでこぴんするかのように一本指を突き出した。
『だって、これはボクの罪だよっ!』
イフリーテは吹き飛んで転がっていく。
転がったままの彼女が額を押さえていると揚羽蝶が飛んできた。
揚羽蝶は彼女の上で円を描いて飛んだ後、その傍らにとまる。
そして光の塊となって、女の姿を形作った。
揚羽蝶の羽を持つ緩い巻き毛の少女がイフリーテの横に立つ。
『もう終わりも許されるはずだよ?』
痛むイフリーテの額を彼女は触れようとして屈むが、その手はイフリーテに掴まれた。
『精霊は、不滅だッ!』
掴まれた手は光となって抜け、少し離れた場所に揚羽蝶の羽を持つ少女は現れる。
そして、首を傾げて呟く。
『僕達が失うのはいやだよ…』
『そのために、ボクたちだって天秤を作ったんだからだいじょーぶっ♪ぜったいに失わない未来を作るのだよぅっ☆』
彼女の隣にシヅクがやってきてその手をとり、二人はイフリーテを見つめた。
イフリーテはゆっくりと起きて浮きながら、語る。
『…〈永劫の楽園〉に理解せよなどとは言わぬ。ただ、我が神は罪を滅する為に根源を滅せよと言ったのだ』
酷くダメージを受けた様で浮遊は安定しない。
『あらゆる根源が断切られれば、罪は無くなる。…それが正しいかどうかの判断は、私にも彼にも出来ぬ』
「それは…」
話の間に割って入り、ロゥァが口を開いた。
「とても愚かな事です。判断出来ないのなら、独断で決めなければいい。そうやって決定させてきたからこそ、たった数年来の魔女が神と呼ばれる迄になってしまった」
彼は首を上げる。
「…聞いていますか?神とは所詮侮蔑の呼称に過ぎないのです」
返事はない。
その代わりにイフリーテが構えをとった。
しかしその体の背後に煌めきが現れる。
『 だ め 』
煌めきは塊を作ってイフリーテの体を掴み、彼女の自由を奪った。
『 も う こ わ し ち ゃ だ め 』
『何故だ!器でしかない貴様が何故ここまで存在し続けられる!』
輝きが一段落してそこに現れたのはイフォトゥだった。
纏わりつく彼女を引き離そうとイフリーテは身を翻すが、正面になったイフォトゥが今度はイフリーテを抱き締めた。
『放せ!』
『 だ め  あ な た が こ わ し ち ゃ だ め 』
イフォトゥの背にあった翼が強い光を持ちながら二人を覆う。
そこにシヅクとイフ、最後に揚羽蝶の羽を持つ少女がやってきて一つ頷きその翼に触れた。
そして翼は大きく広がり、二人をすっぽりと包んで見えなくしてしまった。
そこからイフォトゥの声が響く。
『 さ よ な ら 』
「いいえ。また会いましょうですよ」
悲しげに微笑して目を伏せるロゥァの肩をレイナが持つ。
その目蓋が完全に閉じられる時、白い光がその世界の全てを襲った。

 ディーヴァとリリスが見ていた夢幻モニターもまた、ホワイトアウトした。
その光の逆側に闇の塊が現れている。
「…還るの、ね?」
闇に向かうディーヴァの背中にリリスは声をかけた。
ディーヴァは泣きそうな彼女の方へ、引き返す。
「あっちに行ったところで、何の意味もない事は分かっている。でも、やり直さなくちゃいけない。俺が答えを出さなきゃいけないんだ。…それまで、待っててくれ」
彼はリリスの頭を撫でながら続ける。
「…だからその時が来る迄に、お前も答えを出しておいてくれ」
彼女は俯いたまま、肩を揺らした。
床に跳ねる水の音が虚しく響く。
ディーヴァの手がリリスから離れて、彼は再び闇へと向かう。
その背中に、声が届いた。
「今度こそ後悔しないから…待っているわ、私のディーヴァ」
彼は歩みを進め振り返らないまま片手を上げた。
「ありがとう、リリス。…貴方の事は、嫌いじゃなかった」
闇の一歩手前で彼は吸い込まれるように消えて、何事も無かったかのようにその闇も消えてしまった。
夢幻モニターは何も映さず、膝を折って大粒の涙を流すリリスだけ残された。
「最後まで…かっこつけることないじゃない…」
暗い部屋が彼女を包み、やがて何も見えなくなった。

 繋いでいた腕が放されて、赤に包まれた少女が小さくなっていく。
ロゥァはそんな夢を見た。
不変の氷城の中で眠りこけていた割には疲労を強く感じる。
そして何故だか泣きたい気分だった。
彼は初めて何も考える事も堪える事もなく、泣いていた。
声を上げて溢れる涙はどこか遠くで溢れる涙に似ていたが、どこにあるのかはもう分からなくなっていた。

 光の奔流の中でイフリーテは眉を顰める。
「これは…問題を先送りにしただけではないのか?」
「いいえ、ぼくはなにもうしなっていないから」
イフォトゥは隣を飛行していたイフと揚羽蝶の少女に手を振った。
彼女達は笑顔を浮かべると、そこで止まって手を振り返した。
二人の姿はどんどん小さくなっていく。
「それに…」
イフォトゥはイフリーテを見た。
彼女は首をかしげる。
「ぼくは『うつわ』にやどったようせいだから」
イフォトゥの体は透けていて中に蛍のような光が1つあった。
「それが、真の姿なのか…」
イフォトゥは大きく頷いた。
そして共に流れの中を飛んでいたシヅクが微笑みを向ける。
『もうちょっとで着くみたいだねっ☆3人でいっしょなのかなっ?それともバラバラかなっ?』
彼女の尻尾がひょこひょこと揺れる。
「どっちにしても、きっとたのしいよ!」
イフォトゥの言葉を最後に、彼女達は光の奔流から消えていった。

 草原に手枷が落ちる。
錆色が残る手首をそっと拭って女は空を見上げた。
そこに月はなく、紫色の空がグラデーションを作っている。
「嗚呼、ここにも朝が来るのじゃの…」
常夜ではなくなった草原に風が吹き、女の涙を拭った。
風から声が聞こえる。
『 ありがとう 』
その風は少し暖かい南風だった。

 そして、氷の城の王はゆっくりと目覚める。
一つの物語が終わってしまった事に空虚感を抱きながらも、同時に満足感を得ていた。
故に、疲労に達していた筈だった体を動かすのも苦ではなかった。
彼はその物語を思い出しながら書斎へと辿り着き、氷のペンと白紙の書を持った。
この物語を一冊の本にする為に。



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おわった!おわりました!おつかれさま!
ありがとうございました!

挿絵じゃないけど挿絵っぽく、イフリーテさん!
イフリーテ

イフォトゥ・イフリーテ・シヅクの3人は別の世界に行きました。
きっと私の知らない場所で、きっと幸せに暮らしてくれる筈です。
自然の豊かな、港と山のある洋風な世界が見えるのでそんな所にいるんですよきっと。

ディーヴァは自分の元いた世界へ還りました。
既に亡くなっているので普通の循環に戻ってまたどこかで生まれて、
そして必ず答えを出して生涯一度は必ずリリス(パパ)の元へ現れます。
その時二人がどんな答えを出して、そして二人がどんな道を歩むのかはまだ遠い未来の事。

フィーネさんは神殿を犯した罪で眠り続けます。
その地域のマーレフォンドを全て眠りに巻き込んで眠り続けます。
そしていつか目覚めた時には、彼らは新しい可能性を持つ事でしょう。
フィーネも『このまま一族が絶える事』より『0かもしれない可能性を信じる事』を選びました。
だからいつか可能性を叶えて、彼女もきっと幸せになる事でしょう。

よみさんは普通の女の子になって、穏やかに暮らします。
もう何にも捕われないという不安を持ちながらも、愛する人々に支えられて新しい未来を切り開いていく事でしょう。
ただ、能力者を止めるかどうかはちょっとわかんね。結構今の状態好きみたいなんで。

ガーラさんは殆ど出演してないですがー、彼女もまた次の時代へと消えます。
既に荒野に住む少女がガーラと同じ存在として居るので、そちらに全てが行くんじゃないでしょうか。
彼女もまた、とても遠い場所で幸せに暮らしてくれる筈です。

また、一時的に借り出されてたレイナさんやリリーちゃん、潮やイフ・リトルさんなどなどは自分の今いる世界に無事に還りました。
ロゥァさんやリリスパパさんなんかは後日談で解決するのでそれまでお待ちを。


そんな訳で、イフやディーヴァは今後殆ど関係しない存在になります。
(ディーヴァは、巡りが早ければリリスの元へやってきて関係してくるかーもしれませんが)
勿論イフォトゥがいないのでぱがねも動かせません。

が!
(ここから先は後日談をお待ち下さい)


実は後日談も出来てたりしますが、それは大人の都合でもうちょっと先の公開となります。あしからず。

いままでディーヴァやいふぉぷーに関わって下さいまして有難うございました。
今後も過月彪梦をよろしくお願い致します←
2017.10.18 Wednesday

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12:00 | - | - | -

コメント

書き忘れた!←

本当にイフの誕生日に合わせたんだよ!
はっぴばーすでいいーふぉとぅ!

貴方の行く先に幸あれ!
2010/03/03 11:14 PM by 過月

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